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"デジタルと人間の新しい関わりの形とは” 【連載】Fjord Trends 2021 をデザイナー自らが読み解く #04 「インタラクションの旅立ち」編

本記事ではFjord Trends 2021 のトレンド4 「インタラクションの旅立ち」についてご紹介します。

YouTube、TikTok、Instagram、Netflix…皆さんは1日にどれだけの時間をこのようなサービスとともに過ごしているでしょうか。あまりにも生活の中に溶け込んでいる為、特別意識する瞬間は少ないかもしれませんが、このようなサービスを利用する上でインタラクションは欠かせません。

「interaction(インタラクション)」は直訳すると「相互作用」。特定の操作に対するシステムや機器の反応を意味したり、人と人との間であれば「コミュニケーション」に近い意味を持ったりします。

パソコンやスマートフォンのインターフェースは長年、誰もが簡単に利用できることを目指してきました。その結果、誰でも簡単に使えるデザイン・テンプレートが、時にはオンライン体験を代わり映えのないものにしており、インタラクションが飽和するデジタルの世界で「スクリーン疲れ」を引き起こしています。ワクワク感や偶然性を創出するには、インタラクションを再考する必要があるのです。

そんなインタラクションの更なる可能性について言及しているのが、本記事でご紹介するFjord Trends 2021 トレンド4 「インタラクションの旅立ち」です。最近の事情や革新的な事例などを踏まえながらご紹介していこうと思います。

人をつなぐインタラクションで心身ともに健康的な生活をサポート

感染症対策として外出自粛が求められ「巣ごもり生活」が続き、「コロナ太り」がTwitterのキーワードランキングの上位に浮上。加えて、長時間のスクリーン利用による眼精疲労や腰痛など健康の悪化が懸念される中、健康や美容、食生活への意識が高まり、人々は新たな生活習慣を模索しはじめました

ジムでのフィットネスやサイクリングなどこれまでの習慣を自宅でも継続することをサポートする、スマートミラー「Mirror Fit」室内向け自転車を使ったトレーニングゲーム「Zwift」などが注目を集めています。このような新しいサービスでは、インタラクティブに仲間と繋がることができ、今まで以上に効率的かつワクワクするエンターテインメントのような体験が得られます

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(出典:Mirror Fit フィットネス・トレーニング用 スマートミラー  https://mirrorfit.jp)

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(出典:Zwift サイクリング・トレーニングゲーム https://www.zwift.com/ja)

また、リモートワークにより人との何気ない会話や非言語的なコミュニケーションが減少し、精神的な負荷も高まっています。オンライン会議アプリ「mmhmm」は音声のみに頼りなりがちなコミュニケーションを、一つのエンターテインメントとして彩り、対面での会議以上に見た目にも楽しくインタラクティブな体験を提供しています。

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(出典:mmhmm オンライン会議アプリ https://www.mmhmm.app/)

パンデミックは、人とのつながりが感じられる楽しい体験を共有することが、心身ともに健康的な生活を維持するのに必要なのだと再認識させました。私自身リモートワークで雑談の機会が減り、リモートランチを開催して同僚と仲を深めるのがマイブームなので、このような楽しいアプリはどんどん仕事で活用していきたいです。

インタラクションの進化がエンターテインメントを盛り上げる

家で過ごす時間が増加しデジタルコンテンツに触れる時間も長くなるとともに、サービスの提供者、コンテンツの発信者、視聴者の三者間のインタラクションもまた急速に変化しています。例えば、動画配信サービスの利用者が増える過程で、ビデオカメラや動画編集ツールが誰でも気軽に利用しやすい価格となり、且つ品質も向上。プロの映像制作者ではなくとも気軽にコンテンツを作り簡単に世界に発信できるようになるにつれて、コンテンツは多様化し、人々の好みも急速に変わっています

ライブ動画プラットフォームのSHOWROOMは、臨場感溢れるライブをVR/AR形式でアバターを投影して行えるバーチャルライブ配信サービス「SHOWSTAGE」をリリースしました。将来的には3Dキャラクターではなく、実際の映像を投影する方法の実現を目指しています。

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(出典:Showstage バーチャルライブサービス
https://www.showstage.live
http://topics.smt.docomo.ne.jp/article/phileweb/trend/phileweb-news__d-av__49285
https://thedice.com/showstage-1st-live/)

リアルタイムでのコミュニケーションや、ギフトなどでライブを盛り上げるだけでも楽しい体験ですが、より没入感を味わえる空間の実現を目指すSHOWSTAGEの今後の展開は、他業界も参考にすべき点が多いのではないでしょうか。

スクリーンにとどまらないインタラクションで店舗体験の偶然性を取り戻す

更に、もはやスクリーンではなく顧客の手のひらを購買体験におけるインターフェースとしてインタラクションを再構築したのがAmazonです。Amazonは店舗で買い物客がスキャナーに手のひらをかざすだけで決済できるAmazon Oneというシステムの運用を開始しました。財布どころかスマホも要らず、手のひらで決済だなんて、それだけでECサイトでの購買では味わえないようなワクワク感が感じられそうです。

また、店舗での購買は目的の商品ではない商品との偶然的な出会いを促進します。必要な食料品だけを買いに来たはずが、美味しそうなスイーツが目に留まり、つい衝動買いしたことがあるという方も多いのでは。

しかし、感染リスクの拡大により、店舗での買い物が好きだったにもかかわらず中々足を運べないという方も増えました。従来の決済方法ではどうしても人との接触を完全に避けるのが難しいからです。

そんな課題に対してAmazonは一つの解決策を示したといえるでしょう。「インタラクション」という切り口で安全な購買と偶然の出会いの双方を満たす新しい購買体験を実現したのです。

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インタラクションの可能性を探索しましょう

スクリーンの長時間利用による疲れ、運動量や人とのコミュニケーションの減少などは、多くの生活者が共有している課題です。皆さんの中にも、日常に刺激や変化が少なく、ストレスを感じている方は多いのではないでしょうか。消費も冷え込む昨今ですが、このような状況だからこそサービス提供者には多くのチャンスがあるように思います。

本記事でご紹介した事例は、単純に人のペインやストレスを解消できるという価値を提供するだけではなく、未来の生活をワクワク楽しいものにしてくれるサービスばかり。サービスデザインの仕事をしていると現状の課題はどこにあり、それを解決するにはどうしたら良いかという思考でアイディエーションを行うことが多いため、つい実直に課題解決のための施策を考えてしまうことが多いですが、どのような業界のビジネスであっても私たちのアイデアやデザインが、まるでエンターテインメントのように人々の生活を楽しく豊かにできる可能性があるということも忘れないようにしたいものです。

そのために時には、他業界の面白いインタラクションを探索してみるのもイノベーションのきっかけになるかもしれません。

次回の記事では、トレンド5 「流動的なサプライチェーン」をサービスデザイナーの大世渡が解説します。ぜひお楽しみに!

【連載】Fjord Trends 2021 をFjord Tokyoのデザイナー自らが読み解く
Trend 00 メタトレンド 「新しい領域の地図づくり」編
Trend 01 「歴史的転換期」編 
Trend 02 「DIYイノベーション」編 
Trend 03 「新しい時代の組織のあり方」編 
・Trend 04 「インタラクションの旅立ち」編(本記事)
Trend 05 「流動的なサプライチェーン」編
Trend 06 「共感への挑戦」編
Trend 07 「リチュアルの消失と創造」編

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