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日本ハムのビジョン「たんぱく質を、もっと自由に。」をカタチにする。新プラットフォーム「Meatful」「Table for All」はこうして生まれた【座談会】日本ハム × アクセンチュア ソング/ Droga5 / Fjord

写真左から 加藤 大貴(Fjord Tokyoデザイナー)、杉山 元規(Droga5 Tokyo シニアクリエイティブディレクター)、湯川 智子 氏(日本ハム株式会社 新規事業推進部)、成田 周一(アクセンチュア ソング アートディレクター)

2021年、ニッポンハムグループは企業理念である「食べる喜び」をさらに追求しつつ持続可能な社会の実現に貢献するため「たんぱく質を、もっと自由に。」を掲げるVision2030を策定。

新時代を切り開くべく発足された新規事業推進部の皆さんと共に、アクセンチュア ソング、 Droga5 Tokyo、Fjord Tokyoは新規D2C事業の構想から立ち上げまでを伴走してご支援しました。「たんぱく質を、もっと自由に。」を具現化する新規事業について、プロジェクトのメインメンバーによる座談会で振り返ります。

社長直轄で発足。日本ハム初の「新規事業推進部」

加藤(Fjord) 本日はお集まりいただきありがとうございます。発表されて間もない日本ハムさまの新プラットフォーム、「Meatful」と「Table for All」のプロジェクトついて振り返っていきたいと思います。

湯川(日本ハム) 日本ハム株式会社 新規事業推進部の湯川です。中期経営計画2023で掲げられた事業戦略の一つ「新たな商品・サービスによる、新しい価値の提供」を実行するチームとして2021年4月に発足した新規事業推進部に所属しています。

新規事業を専門とする組織の立ち上げは、日本ハムの70年の歴史において初めての試みです。社長直轄の組織として社内の各部署から集まったメンバーで構成されており、私自身も以前は営業職でした。

企画業務は初めての経験でしたが、各部署からの年齢・ライフスタイル共に多様なメンバーと知恵を出し合い、同時に重要な外部パートナーのアクセンチュア ソングの皆さんとワンチームになってプロジェクトを進めてきました。

お肉の新たな可能性をデザインしたエンタメ事業 ー Meatful

湯川(日本ハム) まずご紹介したいのはMeatful。企業理念である「食べる喜び」を新しい形でご提供するエンタメ事業と位置付けています。

Meatfulで目指すのは、日本ハムが培ってきた生肉を扱う各事業の強みを生かしてお肉の新たな可能性を広げること。ワインとお肉のマリアージュのセット「お酒ペアリング」、地のものを味わう「Meets Hokkaido」、手作りの楽しさを届けるお肉料理調理キット「おうちフェス」、お肉の旨みを丁寧に引き出した出汁「oniku yà base」、新感覚のジャーキー「DRY MEATS」を皮切りに、これまでの商品ラインナップではカバーできていなかったお客様ニーズを捉えた商品を拡充。常識を覆すような新しいおいしさで食の体験が広がる楽しさをお届けしていきます。

杉山(Droga5) Droga5 Tokyo シニアクリエイティブディレクターの杉山です。本プロジェクトを事業構想の段階からご一緒し、事業構想のディレクションや言語化、各商品/サービスのコンセプト、ロゴ、ネーミング、パッケージ、ムービー、WEBサイトなど、あらゆるクリエイティブ開発に携わっています。

Meatfulでは、日本ハムらしさを覆すことを目指しました。「日本ハムといえばシャウエッセン」というイメージで広く親しまれていますが、日本ハムが提供できる商品の可能性はまだまだあります。そして、新しいお客様にリーチするには新しいブランディングが必要です。

「Meatful」という造語は、お肉を通じて喜びや驚きを届けたい、という想いをこめてWonderfulなどの言葉から連想しました。

お肉の新しい可能性を、「DRY MEATS」を例に紹介しましょう。「ジャーキーといえばビーフ、そしてビールのおつまみ」というイメージがあると思います。それを覆すため、マトンやラムといった珍しい種類を含む6種で展開。そして、楽しんでいただくモーメント(瞬間)としては「間食」に注目しました。小腹が空いたけどヘルシーなスナックがほしい。そんな女性や若者のニーズに応える新感覚のジャーキーです。

私たちは、その事業や商品が世の中にどのような意義をもたらすのかをデザインしています。常識を覆しお肉の新しい可能性をどのように広げていけるかを出発点としながら、それをきちんと体験として具現化する。何を活かして何をディスラプトするかを意識しながら、クリエイティブで全体の世界観をまとめることを大事にしました。

「日本ハムらしさ」の再創造

杉山(Droga5) 新規事業推進部の皆さんやアクセンチュアのコンサルタントと「日本ハムらしい新たな可能性」を徹底して考えながら、新ブランドの世界観を議論してきました。

一般的にクリエイティブ人材の出番は、事業内容が固まって商品ができている状態でキービジュアルやテレビCMの制作などをマーケティングや広告宣伝の部門の方々からお請けする段階ではじめてやってきます。しかし今回は事業そのものの構想からコンサルティングのチームと一体になって、最上流の戦略の策定と並行してクリエイティブもつくっていく形で取り組みました。副社長や役員クラスの方々とも直接ディスカッションして進めることができて、強くやりがいを感じました。

その意味で、「ビジネスの上流から下流まで一貫してクリエイティブを掛け合わせていく」というこれからのクリエイティブエージェンシーの在り方のケースモデル、目指すべき先進的な取り組みができたと思います。

成田 (アクセンチュア ソング) アートディレクターの成田です。日本ハムさんのような大企業の新規事業を上流からご支援するのは初めての経験で、新規事業推進部の皆さんを中心にお客様との共創と密なコミュニケーションの大切さを実感したり、多くの学びがありました。

Meatfulの中には多様な商品・サービスがあります。それぞれ異なる特徴を持つ商品・サービスを統合するブランドの世界観をどう作るかはチャレンジングでしたが、各商品を盛り付ける「受け皿」と捉えてタイムレスでユニバーサルなデザインを目指しました。

加藤 (Fjord) 私は同梱物のデザインや、パッケージのデザインのサポートなどで参加しました。紙媒体のデザインが中心でしたが、ブランドの世界観もしっかり理解して取り組みました。世界的なトレンドや他社の事例をリサーチした上で、成田さんとよく議論しました。

デザインは、作っては検証し、吟味してまた作る。そしてまた検証する。その繰り返しです。そこでベストなものを追い求めていくのですが、今回は表記が必要な栄養素や注意書きと、デザインとのバランスという食品パッケージならではの難しさがありました。しかし、事業の視点や安全性の観点もコミュニケーションにおいて重要です。

仕事の進め方においても、クリエイティブのメンバーだけでなくコンサルタントとお客さまとのコラボレーションをどのように作っていくかも学びました。上流工程で意見を出す機会にも恵まれ、こうしたチャンスはフリーランスや一般的な広告制作会社のデザイナー職ではなかなか巡り会えません。

湯川(日本ハム) いろいろなご提案をいただき、一つひとつに楽しい世界観が表現されていました。最終的な決定の際には、日々の生活を大切にする姿勢など日本ハムが大切にすることを軸に新しさを表現できているかを基準としました。社内からは「新しい日本ハムを感じる」「これまでの日本ハムとは違うスタイリッシュさがある」といったポジティブなコメントが届いています。

Meatfulには、新しいお肉の可能性を、もっと広く、さまざまなお客様へお届けしたいという想いが詰まっています。

食物アレルギーケアの取り組みを統合・進化させるウエルネス事業 ー Table for All

湯川(日本ハム) 次にご紹介する「Table for All」は、「みんなの食べたいによりそう」を掲げる食物アレルギーケアのウエルネス事業です。

日本ハムの食物アレルギーへの取り組みの歴史は長く、研究開発を25年以上にわたり続けてきました。Table for Allはこの取り組みを進化させ、食の多様化に応える総合プラットフォームサービスとして構想しました。もともと一人のお客様のお声からはじまった取り組みということもあり、当事者のお客様に心を込めて直接届くサービスを作っていきたいという想いがあります。

必要なときに確かな情報に素早くアクセスできることや、同じ悩みを持つ仲間とつながり、語り合える場所づくりを目指しています。食卓は、すべての人にとって幸せな場所であるべきです。そのための活動であることがしっかり伝わる方法を検討しました。

杉山(Droga5) 私たちはそうした想いを受け、こちらはMeatfulとは異なるアプローチで、日本ハムらしさを生かすことを大切にしました。またTable for Allはより社会的な取り組みでもあります。そこで、日本ハムさんが培ってきた信頼感や安心感を表現することを目指しました。

アレルギーケアに関する従来の情報発信は、病院の雰囲気から無機質でネガティブな印象を与えるものが多いです。しかし、Table for Allでは食物アレルギーと向き合う人々の心にポジティブに寄り添うことを大切にして、優しさのこもった家族的な温かいデザインにたどりつきました。

アレルギーケアに関する情報には医師や専門家の監修が不可欠です。それらをどのように統合して一つのプラットフォームにするかは、コンサルティングチームが知見とネットワークを活かして進めました。一方、クリエイティブチームはそうした仕組みを社会的意義のある取り組みとしてどのように世に出していくのか、どのような世界観で作るかを検討し、アイデアをまとめていく。協働しながら進められたと思います。

湯川(日本ハム) これまでは事業部ごとにアレルギーケアに取り組んでいたため、全社的に統合されていませんでした。そこをうまく結びつけることがプロジェクトの進行において大変なところもありましたが、最終的にとてもよくまとまり社内からもポジティブなコメントが届いています。お客様にとって、アレルギーケアに関する商品や情報にまとめてアクセスいただける場となりました。

見える化と共創で、冒険物語を描く

杉山(Droga5) 私はMeatfulやTable for Allの企画よりも前の中期経営計画としてのVision2030の策定からプロジェクトに参画させていただき、いよいよ皆さんに商品・サービスをお届けできることワクワクしています。Vision2030でクリエイティブの価値を発揮できたと感じているのは、リサーチ、データ、分析などで構成された膨大な計画の中で最もコアの部分を「見える化」するところ。2030年に向けた指針のコアの部分を、言語化やビジュアル化によって世の中に出るアウトプットとして見せ、冒険物語に仕立てることで、社会へはもちろん日本ハムの社員の皆さまのモチベーションや自信の向上にも貢献できればと考えました。そこで、たんぱく質という栄養素を主役にするという発想から「たんぱく質を、もっと自由に。」にたどりつきました。

中期経営計画の策定も含めたこのプロジェクトの大きな特徴は、ロジックで戦略を考えるコンサルタントと、クリエイティブに具現化するクリエイターの協働です。事業構想の段階から一緒になって議論し、信頼関係を構築しながら共創的にプロジェクトを進めてきました。提供価値が世に出ていく時にどのように見えるか、ということから逆算した商品・サービス開発に貢献することができたと思います。

成田(アクセンチュア ソング) 私も今回、コミュニケーションとコラボレーションの価値と重要性を今まで以上に強く実感しました。共創という言葉がぴったり当てはまります。

加藤(Fjord) 同感です。考え方や経験、スキル、専門領域の全然違う人材が一緒になって、一つのゴールに向かって一歩ずつ積み上げてきましたので、いよいよお届けできること感無量です。

杉山(Droga5) 大変な場面もありましたが、プロジェクトチーム全体としてとてもいい雰囲気で進めることができました。コンサルティングチームにとってもクリエイターとの協働は未知なところも多かったと思いますが、その分丁寧なコミュニケーションを心掛けました。「協働こそが大きな価値を生む」という考え方や互いを尊重し合う姿勢が定着しているアクセンチュアの企業文化も大きいと思います。

日本ハムさんから信頼していただけている実感も、やりがいに繋がりました。特にそれを感じるのは、湯川さんはじめ日本ハムの皆さまから「ありがとう」というお言葉を何度もいただけたことです。

湯川(日本ハム) 日本ハムとしても、プロジェクト立ち上げのタイミングからアクセンチュアの皆さんに依頼できたことは成功要因でした。

つまり、プロモーションのためのクリエイティブでもなく、ビジネスモデルをロジカルに検討いただくコンサルティングだけでもなく、事業の世界観を構想する段階からすべての専門家に参画いただき、消費者が触れるモノをつくるフェーズまで全工程を手掛けられるパートナー企業はどこだろうかと考えた結果、アクセンチュアにお願いしようと決めました。

今回のような形での新規事業立ち上げは日本ハムにとっても初めての経験でしたが、それぞれの強みや価値を持ち寄ったことで成功につながったと実感しています。皆さんには素晴らしい視点、アイデア、クリエイティブワークで支えていただきました。

Meatfulはお肉の新しい可能性を、Table for Allでは食物アレルギーに寄り添う取り組みを広げ、明るく豊かな生活をお手伝いするブランドとして育てていきたいです。

杉山(Droga5) 「たんぱく質で次世代を創る」エシカル事業も計画中です。今後、実店舗での展開も含めたバーチャルとリアルの融合、D2Cの仕組みを通じた新しい体験などワクワクする展開にご期待いただければと思います。

湯川(日本ハム) お客様のお声を取り入れながら、一緒に心も体も満たせる商品・サービスを提供し続けてまいります。

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