adtech tokyo2023登壇レポート 「Z世代・アルファ世代のインサイトとどう向き合うのか?」
はじめまして、 アクセンチュア ソングのBrand Designerの川崎です。少し前になってしまいましたが、2023年10月20日(金)にて開催されたadtech Tokyo 2023の公式カンファレンスの一つである「アルファ世代・Z世代のインサイトとどう向き合うのか?」というセッションに登壇してきました。今回は、UUUMの市川さん、ABEMAの西脇さん、POLAの中村さんと共に登壇させていただき、皆さまとのパネルトークを振り返りながら、アルファ世代・Z世代のインサイトの捉え方、捉えるためのアプローチについて、ご紹介していきたいと思います。
Z世代の定義について
UUUM 市川さん
皆さん、こんにちは。今日は「Z世代・アルファ世代のインサイトとどう向き合うのか?」というテーマで、皆さんが普段業務の中でお感じになっていることを深掘っていきたいと思います。最初のお題として「Z世代、アルファ世代ってどんな人」というテーマで始めていきたいと思います。では、中村さんのご見解から聞いてみたいと思います。
POLA 中村さん
今日はよろしくお願いします。POLAはハイプレステージ市場を中心に展開しておりまして、Z世代はコアターゲットではないものの、若年層のお客様は直近増えてきています。我々のお客様に限っていえば、ビジネスのボリュームゾーンではなかったとしてもアーリーアダプターやエクストリームユーザーを知るという視点からもZ世代に着目して、ユーザーインタビューを実施しています。Z世代というテーマで見たときに、例えば20代とか括ることもありますが、20代でも異なる価値観や行動様式が全く異なるんですよね。大学生や新社会人、中堅社会人も全て20代ですが、行動や価値観は全く異なりますよね。実際に業界団体で調査を行い、その世代の方のお家の中をカメラを置いて行動観察をしたり、スマホで何を見ているのかを調べたこともありましたが、Z世代といっても一様に捉えきれないなというのが所感です。なので、ブランディング・マーケティングを行う上で、年齢だけではなく、目的に応じたセグメントをした方がよいですよね。
アクセンチュア 川崎
私は某お客様とSNSにおける情報接触とコマースの関係性について、調査をしてきました。その調査において、Z世代に対するインサイトを掘っていったのですが、私たちの出発点は「(Z世代は)世の中の情報が多すぎて、情報疲れをしているのではないか?情報の選別に苦労しており、情報接触の仕方が他の世代と違うのでは」という仮説でした。しかし、調査の中で16歳の女子高生にインタビューしたときに言われたのは、「情報疲れですか?しませんね、“情報はあってなんぽ”って感じです。」という発言だったんですね。Z世代にとって“情報がないことって悪”であって、情報がないことは何もないことに等しいし、何か購買をするためには情報は多ければ多い方がいいというスタンスでした。
また他にもZ世代の特徴的な価値観・行動だなと感じたのは4つくらいあります。一つ目は、デジタルテクノロジーと共に育ってきた世代なので、情報量の増大によって視聴態度を工夫している点です。具体的には、Z世代にとって「検索するという能動的な行為」は疲れる行為になっているんですよね。だから、情報に対して受動的な態度で接している。二つ目は、SNSで出稿されている広告主などのプロモーションアカウントで、コメント欄を締めているアカウントは「(顧客である自分たちに対して)開かれていないブランド」とZ世代に認識されている。三つ目は、商品やサービスの投稿について、コメント欄が生命線だということ。Z世代は、ポジティブな意見だけではなく、ネガティブな意見もフェアに見ている。逆に、いい話と悪い話の両面がないと、その商品やサービスが信用されにくくなっている(フェイクではないかと勘繰る)。最後は、SNSアカウントは複数持っている。昔、SNSアカウントは一つ持つことが主流でしたが、Z世代はアカウントを使い分けて、多面性のある自分を構成している。つまり、人との関係性の中で、見られる範囲を決めたいということです。
これは私個人的な意見ではありますが、これらの特徴的な価値観・行動は、Z世代独自の価値観ではあるものの、Z世代が起点となって全世代に波及していく「Z世代的な価値観・行動」なのではないかと思います。
また、Z世代のSNSとコマースの関係性について紐どいた時に、驚いたのは、彼らにとって認知・興味関心・比較検討・購買という旧来型のマーケティングファネルを順番に進んでいくウォーターフォール型の考え方って、既に適用しにくくなっているんですよね。調査で、とある21歳の大学生に、SNSを通じた商品購買の実体験をもとに、各ファネルの段階を聞いてみたんですが、こんな答えが返ってきました。
このコメントからわかるように、認知・比較検討・興味って、もう一瞬で起きてしまっているんですよね。マーケティングをする側からしたら、非常に厄介ではあるんですが、それだけ動画や写真などSNS上でのコンテンツの訴求力や破壊力って今後、重要度が増してくるなと感じました。
ABEMA 西脇さん
私自身もインスタグラム、X(旧Twitter)も複数アカウント持っていて、それぞれ役割を変えていますね。インスタグラムは素の自分を見せていますが、素の自分だけど、見られる範囲を決めたいんです。地元との友達との関係性の中にある私、大学から社会人になって数年目の私、30歳になった時の私、と接している人たちが違うので、その範囲を分けたいという心理。だからこそ、鍵アカを作って、その人たちだけに見せたいストーリーなどを投稿している。X(旧Twitter)については私自身、趣味が多くて、特にK-POPが好きなのですが、K-POPのアーティストごとにアカウントを作ったりして、情報を発信したり得たりしています。推し活をしている人たちは複数のアカウントを運用しているように感じますね。
Z世代を捉えるためのヒント
UUUM 市川さん
こういう状況の中で、マーケティング・セグメンテーションする際に、マーケターはどうしていけば良いと思いますか?
POLA 中村さん
悩みは深いですね・・笑 市場の捉え方、ブランディンやプロモーションにおける捉え方があるとは思いますが、Z世代は一つでは括れないですよね。Z世代といっても色んな顔(アカウント)を持っていて、その幾つもある中で「どの顔(アカウント)」をターゲットとして、クラスターやコミュニティに触れるか、真意に迫っていくかが大事だなと感じます。なので、闇雲に若年層向けだからソーシャル施策を進めても、ターゲットする顔を定義したときに、シーンを想定して、彼らに刺さる尖ったものを伝えていかないと、施策として空振りになることが多いですよね。
UUUM 市川さん
データをたくさん見られてきたときに、川崎さんご自身とZ世代とで、異なるところはどの辺だと感じましたか?
アクセンチュア 川崎
一番は、Z世代の方々って、各SNSのプラットフォームを器用に使い分けている点ですかね。Z世代はスマホを持った時点で、Instagram/X(旧Twitter)/Facebook/TikTok/YouTubeのアプリを既にインストールして、アカウントを持っているんですよね。そうなると、例えば、朝起きて、Xでニュースや時事ネタを見る、Instagramで綺麗な写真やトレンドを知る、YouTubeで興味のある商品やサービスのハウツーを知る、TikTokでエンタメを楽しむという行動が日常として出来上がっている。実は、これらのエンタメ性やニュース性の機能や役割って、昔はテレビにすべて詰まっていたんですよ。それが、今はSNSに分散されている。私たち世代(ミレニアム世代)はまだテレビをよく見て情報を得ようとしますがが、彼らはSNSで情報を得ている。その情報の種類と接種の仕方の違いは、大きな差を感じることがありますね。
UUUM 市川さん
実際にZ世代と日頃、お話をなさっている西脇さんはいかがでしょうか。
ABEMA 西脇さん
ABEMAで恋愛番組の広告プロデュースやディレクションを担当しておりまして、リアルでZ世代の子たちと話す機会が多いです。またティーンの方々に向けて、アンケート調査をクォーターに一度のペースで実施しています。調査結果は広告作りや番組作りに生かしていまして、例えば、ティーンが好きなYouTuberをゲストに迎えたり、番組のストーリーに盛り込んだりしています。番組の企画としてイベントを開催することもあるのですが、一週間で8,000人もの方たちに来場いただいています。そのような接点が多くある中で、TikTokで見たものは何?これから何が流行りそうなの?と、トレンドを彼女たちから勉強させていただいています。
恋愛番組の視聴者の方々は、流行に敏感な子たち、学校のクラスで言うとヒエラルキーの上にいる子たちが多いですね。流行感度や情報感度が高く、拡散もしてくれる子たちが多い傾向ですね。
POLA 中村さん
Z世代、アルファ世代の子たちに話を聞くと、今後流行するもの、流行り始めていることが、どんどん出てきますよね。Z世代の子達の中でも常に感度の高い子たちから、流れが生まれているんですね。流行が出てくる速さ・スピードの速さがこの世代の特徴なんだなと感じますね。
UUUM 市川さん
まさに、Z世代のマーケターの方々と話をしていると、彼ら・彼女らのバズる期間って“2-3日で拡散すること”を指すんですよね、一週間だと長いという感覚みたいです。西脇さんは、ティーンの子たちにインタビューした結果を、どう広告やマーケティングに生かしてらっしゃるのですか?また、工夫されていることはありますか?
ABEMA 西脇さん
ABEMAで展開している恋愛番組に長くタイアップしていただいているブランド様があるのですが、番組制作はもちろんのこと、マーケティング施策を考えていく上では「単発の一つの施策に絞らない」というところが重要だと思います。そのブランド様のプロダクトの広告をたくさん打っても、彼女らには刺さらないんですね。なので、単にCMだけではなくて、番組とのタイアップだったり、番組の中でそのブランドの商品を使ってもらうプロダクトプレイスメントの施策、また契約をしたインフルエンサーにプロダクトの実機を渡してSNS投稿をしてもらったり、オフラインイベントを開催していたりと「なんだか、最近このブランドのプロダクト持っている子が多いな」「イケてるインフルエンサーがそのプロダクトを持っているな」という“流行感を醸成する”ことが、ABEMAで注力していることです。ただPRや広告だけ打っても、意味がないよねという話を社内のメンバーともしています。
UUUM 市川さん
Z世代・アルファ世代の子たちがどんな広告を望んでいるのか、調査から傾向が分かったりしますか?
アクセンチュア 川崎
先に伝えておくと、Z世代・アルファ世代の子たちって、オーガニックコンテンツだろうが広告だろうが、『正直どっちでも良い』というスタンスを持っていると思います。そのコンテンツの届け方が何かに関わらず、そのコンテンツ自体が「楽しいか、気持ちをアゲてくれるか、ワクワクするか」というところがポイントかなと思います。リサーチしていても、コンテンツと広告の違いに気づいていない人も多い印象です。広告に注視している子たちに、なぜ見ていたのかを聞くと、「ストーリー性があるからです」というコメントが多かった。つまり、次を観たいと思うか、続きが気になるかという点が彼らを惹きつけたポイントだったんです。なので、コンテンツとしてストーリーや人間性に触れるようなところが、今後のコンテンツの基本要件の一つになっていくのではないかと感じます。
UUUM 市川さん
当社ではインフルエンサーマーケティングを軸に様々な支援をしているのですが、当社独自の言葉で「コンテキスト・ドリブン」という言葉を使っています。インフルエンサーや視聴者の方が「どんなストーリーだったら興味を持ってくれるか(興味を持ってもらったら広告効果が上がる)」を常に考えています。こういった話って、広告会社やプラットフォーマーは共感していただけると思うのですが、中村さんを始めとしたメーカー側の立場に立った時に、どう思われますか?あるいは、マーケティングを行う上で気をつけていることってありますか?
POLA 中村さん
ブランドが言いたいことと、広告やPR等のコンテキストに載せて伝えていく手法を組み合わせたいときに、気をつけていくべきことは、パートナーさんとなるような媒体様・インフルエンサー様と、ブランドのストーリーとの文脈合わせを、最初の段階でしっかり行うことが重要と感じます。パフォーマンスの観点でいうと、インフルエンサー様や媒体様が持っている世界観や表現に合わせた方が、結果が良いことが多いと思います。ただ、その表現に対して、ブランドサイドがOK/NGを後から言う状況になっている段階で、負けていると思うんですよね。自分たちがブランドとして伝えたい世界観があるのであれば、最初の段階で世界観やコンテキストを合わせていくこと、その協力体制を築くことが重要だと思います。最初の構想の段階で、コンテキストとブランドのマッチングがあり、その文脈合わせを行なった上で、社内で周知・理解を進めることが大切だと思います。
ABEMA 西脇さん
コンテンツと広告では考え方が全然違うと思いますが、広告としてのコンテンツにおいては、商品情報を無理に自然に溶け込まそうとしすぎないことを意識しています。Z世代の子たちって、広告は広告として受け入れていて、あとはもう少し面白いことを知りたいというスタンス。CMはCMとして打って、広告を他の施策において無理に溶け込ませすぎないという考えも重要かと思います。
近い将来、Z世代を魅了する機能やサービスとは
UUUM 市川さん
今後、Z世代やアルファ世代に人気を博しそうなプラットフォームやアプリが何かありますか?
ABEMA 西脇さん
Threadsが出てきた時に一気にアカウントを作り始めた人も多いと思うんですが、私自身もアカウントを作ったのに、二週間くらいで開くことがなくなってしまったんですよね。例え新しいものが出てきても、やはり流行感じゃないですけど、周りの人がやってないと使わなくなってしまって、結局Instagram/TikTok/LINE/YouTubeに戻ってきてしまう。最近、若い子に流行っているなと思うのは、カメラアプリですかね。幾つか流行っているアプリがあるのですが、アプリによって、この盛れ方が丁度いい、このフィルターが丁度いいといって、ティーンの子たちは試行錯誤しながら、好みのアプリを使い分けている印象です。アプリによって、ナチュラルやビビッドなものがあるので、自分たちをどう魅せたいかによって使い分けている印象です。
UUUM 市川さん
近い将来、意外と普遍的なものという観点で、何か気になるサービスなどありますか?
POLA 中村さん
Z世代と捉えるときって「音(音楽)」ってものが大きなキーワードだなと思います。流行が生まれるときに、そのルーツは音楽だったよねということがあって、それは世代を超えて共通している。私はヒップホップが好きなんですが、例えば” disrespect“って昔ながらのヒップホップ用語だったのですが、その後「ディス」という流行り言葉に繋がったり、「Chill」なんて言葉も昔からあったのに、最近になって若い子たちに使い始めたり、音や音楽を起点にZ世代に広まっていくなと感じます。これから先のトレンドではないですが、音や音楽って重要だなと思います。「ひき肉です!(ちょんまげ小僧)」の流行についても、社内で話していたときに、音のテンポ(リズム感)とフローみないなところが、重要だったんじゃないかと話をしていました。なので、今後は音楽・音をどう取り入れていくかを考えていきたいと思います。
クロージング
UUUM 市川さん
最後にみなさまからまとめのコメントをお願いします。
ABEMA 西脇さん
本日はありがとうございました。Z世代・アルファ世代にとって、流行の移り変わりが本当に早いので、流行った後に取り入れようとしても、取り入れる頃には流行が古くなっていることがあります。流行っているからといって、無理をして広告・コンテンツに打ち返していこうとしなくてもいいのでは?と思います。だからこそ、私は普段から、Z世代・アルファ世代の子たちと話すこと多いのですが、皆さんも出来る限り、その世代の子たちと話をしてみたら色んな発見があると思いますので、ぜひ接点を持っていただけたらと思います。
アクセンチュア 川崎
Z世代・アルファ世代のSNSアカウントを複数持っている話が冒頭にありましたけど、Z世代・アルファ世代ってOne Faceで一様に捉えられないなと感じました。定量的にセグメントを切った顧客理解ももちろん大事なんですけど、N=1であっても、Z世代・アルファ世代の子の生活や日常全体を、そして彼ら・彼女らの表の顔や裏の顔を、デザインリサーチやデプスインタビューなどを通じて、深く理解をしていくことが大事だなと思います。
POLA 中村さん
Z世代・アルファ世代を捉えるときに、誰に話を聞いているかを捉えること大切だなと思いました。当社では、自社の某商品、某ブランドを購入した人の中でZ世代・アルファ世代でクラスターを切ってみて深掘っています。世代の全体を捉えることが難しいとは思いますので、そうなったときにある条件を設定したうえで、世代で切ってみて「その条件に属するクラスターの中で、Z世代ってどういう存在なのか」を定義して紐解いていくと、ヒントも見つかりますし、アウトプットへの生かし方が変わってくると思います。
UUUM 市川さん
皆さん、ありがとうございました。このタイトルを最初に見た時に、Z世代・アルファ世代の切り方って難しいなと感じたんですよね。なので、レコメンドの仕方などヒアリングをする機会を実際に設けて、結果の生かし方を検討していただけたらなと思います。みなさま、本日はありがとうございました。
登壇者について
登壇者プロフィール
中村 俊之
株式会社ポーラ / 日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構 顧客戦略部 部長 / 代表幹事
西脇 世奈
株式会社AbemaTV ビジネスディベロップメント本部 クリエイティブ局 シニアプロデューサー
市川 義典
UUUM株式会社 執行役員
川崎 洋祐
アクセンチュア株式会社
Instagramアカウントでスタジオの様子をお届けしています。ぜひアカウントに遊びにきてください!: @song.design.japan
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