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【Fjord Trends 2022】 ”情報破綻”の時代。ブランドが信頼獲得の為にまず取り組むべきことは

こんにちは。アクセンチュア ソング Growth & Business Designチームの櫻井とFjord Tokyo プログラム・マネジャーの大塚です。このnoteでは、Fjord Trend 2022 で紹介している4つ目のトレンド、「真実の拠り所 (This much is true) 」について、日本版作成に携わった我々の解釈や事例も踏まえながら紹介させていただきます。

トレンドの背景 ― パンデミックによって人々は情報により懐疑的に

このトレンドの背景には、「日常的に膨大な情報に触れている」「触れた情報の真偽を確かめる」という状態が “当たり前”になったという、昨今における生活者の大きな変化があります。

何かが気になった時、手元にあるスマートフォンや音声アシスタントにすぐ質問する。すると、即座に答えが返ってくる。- これは私たちが日々当たり前に経験していることですが、過去を思い返すと、当時からは信じられないぐらい大量・多様な情報を無意識的に手にしているか、再認識できるはずです。

さらには、新型コロナウィルス感染症のパンデミックによってリモートワークが普及したことで、情報収集やコミュニケーション活動のオンライン移行も加速し、ますますそのデータ量や範囲は増え続けています。事実、2021年のオンライン上データ量は2019年に比べて約2倍に増えているという調査結果も出ています。

そして一旦手にした情報を信じていいものなのか疑うこともまた、身に覚えはありませんでしょうか?現在我々はTwitterやInstagram、tiktokをはじめとするSNSのタイムラインやインターネットの検索結果など、実に様々な発信元からの情報を手にすることができるため、我々自身はもちろん周囲の人々も、無意識的にその情報の信頼性を瞬間的に判断して取捨選択しているなあと、普段の生活を振り返ってみて気付かされます。

またこの傾向は、新型コロナウィルス感染症関連の間違った情報や誤解を招く情報に触れる経験を4人中3人がしているという調査結果があるように、パンデミックにより加速したことが想像されます。

Fjord Trend 2022 日本版発表資料から抜粋
https://www.accenture.com/jp-ja/insights/interactive/fjord-trends-2022

ブランドの“信頼性”が購買の意思決定に影響を及ぼす

情報が信頼できるものかどうか、さらにはその情報の元となるブランドが信頼できるかどうか…これらは生活者が製品やサービスを購入する意思決定にも影響を及ぼしていると、トレンドでは語られています。

従来、意思決定に影響を与える要因は、製品のスペックや価格など機能的なものが中心でしたが、昨今のエシカル消費への意識の高まりもあり多種多様になっています。

その実態を示す現象として、労働者や動物の倫理的扱いやフェアトレード、環境配慮などを透明性高く情報開示するブランドの活動も出始めています。

「Everlane」輸送費なども含めたTrue Cost(本当のコスト)を自社ホームページで明示。 https://www.everlane.com/about

自社の製品やサービスの購入を検討している生活者は、大量かつ様々な領域に広がった質問を持っています。企業が適切なタイミングと方法でその質問の答えを伝えなければ、生活者になかなか信じてもらえない状況にある今だからこそ、その情報の伝え方(情報レイヤー)の再設計の必要性を強く感じています。

日本でも、エデルマンが実施した信頼度調査「2022 エデルマン・トラストバロメーター」によると、約50%の人々が「個人的価値観や信念に基づいて、ブランドを購入したり支持したりしている」と回答しました。グローバル平均値よりはやや低いものの、日本企業でも自社の姿勢や価値観を積極的に発信していく必要性が差し迫っていると言えるのではないでしょうか。

エデルマン・ジャパン株式会社「2022 エデルマン・トラストバロメーター」 https://www.edelman.jp/sites/g/files/aatuss256/files/2022-03/2022%20Edelman%20Trust%20Barometer_Japan%20Report_J.pdf

「情報レイヤーの再設計」で重要なこと

生活者の意識や質問の幅が様々な領域に広がり、さらに生活者が自身の好きなタイミングで質問や検索ができる現代だからこそ、ブランドが生活者に対して提示する情報(答え)も、生活者の「欲しい場所で・欲しい時に・欲しい量と質で」提供されることが求められます。この生活者の傾向は、企業側が意図したように情報を提示することが難しくなっていくことも意味します。

また、情報をこれまで以上に疑うようになった生活者にとって、様々なレイヤーで提示される情報は、一貫したものである必要があります。今までのように一つの部署や限られた担当者のみが対応するのでは一貫性は保てません。「情報レイヤーを再設計する」活動自体に、会社全体で取り組む姿勢が求められているのです。

ではブランドとして一貫した情報を適切に届けるために、企業はどのようなアクションを取るべきなのでしょうか。

弊社がご支援しているある企業では、各サービスで分かれていたウェブサイトの仕様・デザインを一元化し、生活者視点で情報を整理することに力を入れています。これまでは各サービスそれぞれで情報やサービス提供をしていましたが、全体で一貫した顧客体験を届けるため、組織内外のメンバーで構成された横断プロジェクトを立ち上げ、組織全体として、情報レイヤーの再設計をし始めています。

日本版トレンド作成に参画してみて - これからやるべきこと

「情報レイヤーの再設計」は、単純なターゲティング広告やレコメンドとは異なり、生活者の購買意識の流れを階層構造的に捉え、その時々に合わせた適切な情報を適量・わかりやすく伝える必要があり、容易ではありません。また、顧客体験全体を捉えた一貫性のある情報提示が求められるため、一つの部署や限られた担当者のみが対応するのではなく、チャネルや部署といった既存組織の枠組みを越え、組織横断で取り組む必要もあります

しかし、このトレンドの背景には、「日常的に膨大な情報量に触れている」「触れた情報の真偽を確かめる」という状態がもはや生活者の“当たり前”にまでなっているという事実があり、いまが「情報レイヤーの再設計」に向き合うべきタイミングだと強く危機意識を持ちました。

トレンドの最後で語られているように、まずはできることから(例えば、自分のブランドがどのように検索されているか生活者目線でチェックし、昔の古い情報ページがそのまま残っていないか確認するなど、小さなステップ)でも始めることが大切です。私たちもこの活動の重要性を意識しながら、日々の業務に取り組んでいこうと思います。

 Fjord Trends 2022についてさらに詳しくはこちら

筆者プロフィール

櫻井 那奈 / Nana Sakurai
Growth&Business Design Team所属
大学時代に経営学・マーケティング学を専攻し、2019年からAccentureに所属。ブランディング業務やクリエイティブディレクションを経験しながら、デザインやクリエイティブに主軸を置いたプロジェクト遂行に従事。趣味は音楽制作と野外フェスで乾杯することです。筆者Twitter アカウント: @lushman_22

大塚 まり穂 / Mariho Ohtsuka
プログラムマネージャー / Program Manager
大学時代に情報工学を専攻し、エンジニアとして主にWEBサイト設計・開発に従事した後、企画職に転向しFjord Tokyoにジョイン。大小関わらずユーザーにとって心地いいサービス体験設計に興味があります。好きなもの:ゲーム・舞台鑑賞・物語

Fjord Tokyo公式Twitterアカウント: @Fjord_Tokyo
Fjord Tokyo公式Instagramアカウント: @fjord.tokyo
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